2024年度 授賞作品発表

最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞については賞状及び記念品(図書館総合展の眼鏡クロス)をお送りします。
後日、送付先確認のご連絡を申し上げますので、ご協力をお願い申し上げます。

撰者は以下の先生方です。(事前予告から変更があります。)
お仕事部門:イソカツミ先生(司書・KYOTO◎819ing〈京都俳句進行形〉) 応募総数40作品
 部門講評:今年も司書さんたちのやさしく、あたたく、楽しく、ユニークな視点をもつ俳句や短歌に触れることができました。選者をさせていただきありがとうございました。昨年も書いたのですが、お仕事部門ということですので、もう少し雇用形態や労働環境に言及する俳句や短歌があってもいいかもしれません。この句歌会が続いていくことで、そういう面も見えてくるのかもしれないなと思ったりしつつ、これからも楽しみにしています。
電算の悲喜劇部門:木川田朱美先生(京都精華大学) 応募総数3作品
司書あるあるある部門:德田恵里先生(近畿大学司書課程非常勤講師) 応募総数24作品
 部門講評:この部門はお仕事部門に入るのか、観察記部門に入るのか悩みながら投稿されている方もあるのかなと感じました。 そのため今回の選評では部門の特徴を打ち出して、より多くの人に「それあるあるある!」と共感されそうな作品を選出いたしました。 これからも日々のお仕事の中で「あっ、これ”司書あるあるある”かも!」と感じることがあったら、ぜひその瞬間を逃さず言葉で書き留めてください。そして来年、また投句・投歌していただければ幸甚です。
観察記部門: 小曽川真貴先生(認定司書) 応募総数11作品
 部門講評:今年度もさまざまな視点、角度から図書館を見た作品が集まりました。ヴァリエーションが多く、楽しみながら選ぶことができました。みなさま、素敵な作品をありがとうございます!日々のちょっとした気づきをリズムに乗せて、ぜひ次回も多くの作品をお寄せください。
〇〇の主張部門:木川田朱美先生(京都精華大学) 応募総数2作品
図書館員さんよく聞けよ♪部門 :德田恵里先生(近畿大学司書課程非常勤講師) 応募総数0作品
 ※同部門については作品数の通り、審査はございませんでした。
当日部門:木川田朱美先生(京都精華大学) 応募総数12作品

●お仕事部門 最優秀賞『やわらかく背表紙を押す手のひらで書架と心を整えていく』 長野県 アオヤマシオリ 様
   撰者講評:背表紙の面を揃えて整えていく作業。すっきり整った書架が迎えてくれる図書館は利用者も居心地がいいことでしょう。読んだ人の心も整えてくれるすてきな短歌です。

●お仕事部門 優秀賞『雑草という名の草はなかれども 雑著の項のあるありがたさ』 神奈川県 佐々木秀明女 様
   撰者講評:雑草と雑著を対句とする司書ならではの発想に脱帽です。雑草がひとつひとつ名を持ちたくましく育つように、雑著の棚も個性的でいきいきしていますね。

●お仕事部門 佳作『金減らし人も減らすが成果出せ 「できない」それは工夫が足りない』 詠み人知らず 様
   撰者講評:多くの方が共感できるシチュエーションではありますが、湿っぽいぼやきや愚痴でないのは、言葉選びのリズムがいいからでしょうか。

●お仕事部門 佳作『ネジ蓋付き飲料だけどゆたかなるプロテイン振る学生のひと』 北海道 詠み人知らず 様
   撰者講評:しんとした閲覧席でばっしゃばっしゃと振られるプロテインのボトル。体育会系の学生さんでしょうか。困ったな、と思いつつ、「ゆたかなる」の言葉から温かく見守っている司書の姿が想像されます。

●お仕事部門 佳作『返された 本の微熱に 告げられる 夏のおとずれ 前期の終わり』 福岡県 Oh!Yeah!健三郎 様
   撰者講評:カウンターでも返却ポストでも触れた本がひんやり冷たかったりほんのり温かかったり。司書ならではの繊細な感覚を短歌にされたところがすてきだと思いました。

●お仕事部門 審査員特別賞『「この本が 欲しい」と君が 言ったから 買って明日が 取置期限日』 鳥取県 司書S 様
   撰者講評:俵万智さんの「サラダ記念日」の本歌取り。リズムがぴたりとうまくはまっていて、リクエストの取り置き期限を過ぎた資料を見れば思い出して口ずさみそうです。

●電算の悲喜劇部門 優秀賞『調子どう?声かけ見守り気にかけて動作画面のRPA』 長野県 アオヤマシオリ 様
   撰者講評:「声かけ見守り気にかけて」の語感のよさが決め手でした。ときには人にするよりまた違うかたちで、機械のご機嫌を伺うのも図書館員の仕事のようです。

●司書あるあるある部門 最優秀賞『図書館で図書館の本を読むたびに図書館に置いて行かれてしまう』 茨城県 小川いなせ 様
   撰者講評:図書館と言う言葉が3回繰り返されているリズム感がとても素晴らしかったです。
図書館に関する論文集、司書課程の教科書、図書館情報学に関する雑誌。そういったものを読むたびに、「あれ?」と首をひねりたくなる気持ち、よく分かります。でも”権威あるセンセイ”が書いてたりすると、「これおかしいよね」なんて絶対言えない…。この違和感や葛藤を抱えておられる現場の司書さん、実はすごく多いのではないでしょうか。
そして優れた取り組みに関する本を読んだ時も、なんだか図書館(業界)に置いて行かれたような気持ちになりそうです。
誰もがちょっと思っているけど言いにくいことを、ズバッと詠んでくださった勇気に敬意を表し、最優秀賞です。

●司書あるあるある部門 最優秀賞追加『そういえば 期限日昨日 だったっけ? 督促の手を 思わず緩め』 埼玉県 詠み人知らず 様
   撰者講評:働いていると「いつでも返せるし」という気持ちになって、うっかり返却日にルーズになってしまう。全く褒められた話ではないですが、これもまさに”司書あるあるある”だなと感じました。この歌を聞いてMyLibraryを確認しようと思うのは私だけではないはずです。

●司書あるあるある部門 優秀賞『亡き叔母が読んでた時代小説の新刊が載る全点案内』 長野県 アオヤマシオリ 様
   撰者講評:愛読者の一人が亡くなっても続くシリーズがあれば、著者が亡くなって止まるシリーズもある。
新刊全点案内は情報を載せたカタログですが、目を留めたタイトルに何かの想いを寄せる方も多いのではないでしょうか。
叔母の追悼という個人的な想いを詠んでいる歌ですが、多くの方の共感を呼ぶと感じました。

●司書あるあるある部門 優秀賞『司書同士 仕事の話で盛り上がり 意外に本の話をしない』 埼玉県 秋のしおり 様
   撰者講評:詞書から察するに、学校司書さん同士の会話でしょうか。
一人職場の方も多いだけに、ここぞとばかりに仕事の話をする(しかもめちゃくちゃ早口で)という姿が目に浮かぶようでした。

●司書あるあるある部門 佳作『わたしよりほんの半年歳下の 本の小口に浮きあがるシミ』 神奈川県 佐々木秀明女 様
   撰者講評:詞書の「愛された証ですか?」にまずドキっとして、それが小口に浮きあがるシミであることに、面白みを感じました。”わたし”も”本”もいろいろな年月を重ねてきたのだろうな…と考えさせられます。シミのある本が愛おしくなりそうです。

●司書あるあるある部門 佳作『気がつくと どこでもやってる 面揃え』 神奈川県 詠み人知らず 様
   撰者講評:去年も似たような作品があったような…。でもそれだけ「司書あるあるある」なんですよね、きっと。

●司書あるあるある部門 佳作『クラムボン 今年も笑う かぷかぷと もはや賢治は 秋の季語』 神奈川県 詠み人知らず 様
   撰者講評:単元や課題で季節を知るのは、学校図書館/大学図書館あるあるあるですね。山梨(やまなし)は本当に秋の季語ですが、それを通り越して賢治自体を秋の季語と感じられてしまうところに面白さを感じました。
短歌としては最後の字足らずが惜しかった!

●司書あるあるある部門 佳作『学生の 読書離れ 気になるが ネットの手軽さ かなわない』 詠み人知らず 様
   撰者講評:これはね…分かりますね…自分もそうですよね…、とみんな思うのではないでしょうか。
ネットの手軽さを知ってしまった、もうこれが無い時代には戻れない。だからこそ、紙の本にはどんな意味があるのかと考えさせられてしまいました。

●司書あるあるある部門 審査員特別賞『司書の母 手伝いのはずが ガチ過ぎて もはや中学生の レポートではない』 茨城県 どんぐりたぬき 様
   撰者講評:家でもお母さんは「司書」なのだなと、思わず笑ってしまいました。怒る娘さんの姿も想像すると愛らしいです。
定型に収まらない歌ですが、まさしく「あるあるある!」と頷かされました。

●観察記部門 最優秀賞『「遅れました」頭を下げる健やかさ ゆるされるのを待ってるツムジ』 神奈川県 スマイル 様
   撰者講評:素直に謝れるのは素晴らしいことですが……思わず笑わされる下の句。詞書がまた効いていますね。

●観察記部門 優秀賞『一冊の本のみ求め来し君に いつの日か届け書架の綺羅星』 図書館のすずめ 様
   撰者講評:もちろん予約本の取り置き&受け取りもサービスなのだけれど……「良い本入ってますよ、見て行ってね!」なんて呼び込みもしたくなりますね。

●観察記部門 優秀賞『「ピッ!ってしたい」 「カウンターに 入りたい」 それから「本が 好きだから」』 神奈川県 詠み人知らず 様
   撰者講評:子どもたちの発言が目に見えるようです。体験に来る子たちもたいていそうですね。

●観察記部門 佳作『目の前で「忘れた」「良いよ」と親切に貸すな利用証それは又貸し』 詠み人知らず 様
   撰者講評:あるあるあるある……となる方も多いのでは。見逃すと友情が壊れる危険性もありますからね。

●観察記部門 佳作『ブックポストの 本ら冷たし 〈寒いよ〉とう 不平不満の 聴こえるような』 東京都 堺 公美 様
   撰者講評:夏熱く冬冷たい……ブックポストの本に触れると季節を感じますね~!

●観察記部門 佳作『焦る気の・余炎惜しくも・1ページ』 鹿児島県 すんくじら 様
   撰者講評:詞書の内容に思い当たる方も多いのでは。こういうときの読書ほど熱中してしまうんですよねぇ。

●観察記部門 佳作『共通テスト明けからぱたりと来なくなる高校生よ後輩となれ』 茨城県 小川いなせ 様
   撰者講評:地域公開しているところはあるあるでしょうね。「この図書館を利用したくてこの大学に来ました!」なんて言ってもらえたら感無量かも。

●観察記部門 審査員特別賞『江戸っ子が「コーシですか?」と 尋ねれば 「春から助教授!」 鼻息荒く 』 東京都 詠み人知らず 様
   撰者講評:江戸っ子の言葉、今はどのくらい残っているのでしょうか。貴重な歴史の証言ですね…!

●〇〇の主張部門 最優秀賞『キョロちゃんのおもちゃの缶詰当たったら おぬしも正規の司書になれるぞ』 神奈川県 佐々木秀明女 様
   撰者講評:おもちゃのカンヅメを当てるにはまずなにがしかのエンゼルを集めるという蓄積が必要で、そのエンゼルを集めるには信じて買い続けるしか方法がありません。正規職員を目指すのも似た営為であるということを詠いあげる一首でした。

●当日部門部門 最優秀賞『「本キライ!」な ばあちゃんの待つ 集落へ 図書館車で 山道一時間半』 すみれ亭 東風 様
   撰者講評:定型ではないのですが、移動図書館車で行く先の住民に対するサービス側のやさしい視線を読み取ることができました。本嫌いでも図書館がつくるコミュニティは好きで、そこから資料利用に繋がっていく(かもしれない)様子が好ましく、選出しました。

●当日部門部門 優秀賞『「若者」も 読むよ ファーブル昆虫記』 髙瀬 小唄 様
   撰者講評:一応児童書、YAと区切ることが多いと思いますが、対象と想定している相手以外のニーズもあるという一句でした。少し違うかもしれないですが、調子を崩したときに本が読めなくなったら児童書からリハビリをするといいと選者は思っていて、そういう人の存在も意識されているのかな、と思います。

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